みなさまこんにちは!松野時計店の野の方です。
ご存じのとおり私と松の方でお仕事をしているわけですが、私に続いて松の方が体調不良となりました。呼吸が苦しい!って言ってるのでさすがに病院行け!と叩きだしましたが、診察の結果は・・・逆流性食道炎。
食道炎って呼吸にも影響するんか。念のため尿検査もやったらしく、「糖が出てますね」って言われたっすわ、ハハハって。・・・いやT尿じゃん。通称Tじゃん・・・。積んでいませんか?逆流性食道炎(重症)、痛風、万年下痢(重症)、老眼に加えてT尿って。数え役満じゃないすか、成人病の。
去年の夏にクーラーがぶち壊れて、今年の猛暑もクーラー無しで乗り切るという偉業を成し遂げようとしている松の方ですが、ぽっくりいかれてはかないません。てかクーラーぐらい買えよ。凄く儲かってないやばい会社みたいに思われるだろ。
みなさまお体には十分ご注意を。熱帯夜の次の日に出社してこなくて干物になってないか心配ですよ。
さて相変わらず忙しい毎日ですが、今日は珍しいバルジューと珍しいんだけどうちのブログでは定番になりつつあるバルジューを。バルジューばっかじゃん。
バルジュー89 ブライトリング・トリカレムーン
古いブライトリングのトリカレムーンです。トリプルカレンダー+ムーンフェイズですね。クロノグラフがついてないからシンプル、かと思いきやボーイズサイズぐらいなので35ミリも無い、と思います(測ってません、すいません)。小さくなればなるほどに手間がかかりがちです。けしてめんどくさいとは言ってません。かかりがちって話です。
状態としては精度がかなり進む、カレンダーが上手く変わらない時がある、月に至ってはおかしな位置で止まったまま、と結構深刻です。
バルジューは色々作業したけど89ってのは初めてです。部品あるかな~と探ってみましたが、皆無。そりゃそうだろうなぁ。
まずは時刻部分から
これは香箱といってゼンマイが入る部品です。ゼンマイを外して空転させるとぐらつきます。香箱は縦横にアガキ(ゆとり?隙間?余裕?)がなくてはいけませんが、経年で摩耗するとそのアガキが大きくなってガタついてしまいます。本来であれば新品に交換ですが、部品はありません。
穴を詰める
摩耗で大きくなった穴をタガネで詰めています。ガンッっと叩いては壊してしまうので、塩梅を見ながら徐々に詰めていきます。ちょっと叩いて組んでみて、またちょっと叩いて組んでを繰り返します。ね、めんどくさい、じゃないや手間がかかりますね。
時刻機構は終わりましたので(写真はありません)カレンダー周りへ
文字盤側のカレンダー関係の部分です。外してしまっていますが、傷がついているネジ穴に曜日や月、月齢の車が付きます。これなんで傷がついているかというと、何度もネジを締めたり緩めたりを繰り返しているうちに雌ネジが摩耗してしまい、ネジが噛まなくなったようです。
噛まなければゆるゆるなのでネジ穴を叩いて締める事で噛むように手を入れています。でもさすがに限界が近い。本当ならこのプレートを交換するのが一番ですが・・・、まあ無いです。
変わった部分が分かりますか?
そうですね、摩耗しきって減ってしまったネジ穴を補強してあります。ネジ穴を一旦大きく削ってしまいます。そこに真鍮棒に穴を開けたやつ(パイプを切ったもの)を叩きこんであります。高さの調整もあるので割と大変です。
とりあえずはここまでいけば後はタップを切ればネジ穴になるって寸法です。月表示が動かなかったのも雌ネジがガタガタなのに無理矢理ねじ込んで車が斜めになっていたのが原因です。よしタップを・・・。
タップが無い・・・
金属を切る金属なので(分かりにくい)非常に硬く作られているのがタップです。ダイスもそうですけど。なので無理をするとパキッとすぐに折れてしまいます。丁
度サイズの合うタップが無かったのでしゃーない作りました。任意のダイスでステン棒にネジを切って、逃げのラインを入れて、焼を入れれば簡易タップの出来上がりです。ステン相手じゃ心もとないけど、真鍮なので簡易でもOKです。
こんな調子でタップを立てます
写真ではムーンフェイズが付いていますから、ネジを切っている穴はそのムーンフェイズを早送りするレバーを留めているネジ穴を作っているところです。一カ所ダメだと他のネジ穴も劣化してきています。
車をつけてみる
試しにそれぞれの車をつけて塩梅を見ていきます。丁度右側に真鍮のワッシャー状のものがありますね。これ余ったワッシャーです。
それなりになったので組みつけます
とりあえず形にはなりましたので、しばらく様子を見ていきます。気になるのはムーンフェイズを送るピンがかなり摩耗している事。本来であれば、あ、もういいですか、部品が無いってのはかなり大変です。上手く送れなければピンを立て直す、直せるのかなぁ。結構大変です。
大変なのが最初から分かれば良いんですが(良くないけど)、とりあえずの修理金額は20000円程度です。そうですね、ネジを云々なんてのはサービスいたしております!でも先に分かれば、なぁ。でも良いんです、ご利用ありがとうございます!
次は定番?バルジュー72C
定番?72Cはトリカレ・クロノグラフです。うーん、慣れっこですかね、まあ大変ではあります。がんばろう。この個体は県外からご依頼頂きました。このバルジュー以外でもサブ等ご依頼頂きました。ありがとうございます!
状態ですが、まずはリューズがありません。うーむ、そうか。リューズが無いのはすぐ分かりますが、受け手のケースにチューブも無くなっています。リューズにくっついてチューブも一緒に無くなったか、それとも元々無いのか。うちにストックしてあるビンテージのリューズで合わせてみるとどうしてもチューブが必要です。
じゃ作りましょう
ぐりぐりとステン棒に穴あけ。なんか毎日旋盤を回してる気がしますが・・・。
こんな感じ
チューブが三段になってますね。なんででしょうね、サイズは測ったはずなのに。えーっと実は既成のチューブで合いそうなのがあったんですよ。ぐりぐりと穴を開けたのは無駄でした。既成品を加工した方が早いですもん。リューズは中古ですがビンテージのリューズです。
アメリカからアソートメントで取寄せましたよ。現行のリューズじゃこういう形状は無く、もっと厚くてデザインが台無しです。中古でもこっちの方が断然おススメです。
巻芯を作ろう
バルジュー72なら巻芯(リューズと機械体を繋ぐ部品)ぐらいあるだろと思ってましたが、国内は全滅。近場の材料店はもちろん、東京でも皆無。じゃ海外ならあるだろと探してみると・・・ありましたよ、フランスに。
じゃすぐ送ってよと思いきやヴァカンスですよ。今の時期ヴァカンス。いつになるのか分かりませんので自前で作ります。最初から作れば良かった。めんどくさいけど。
完成です
実はバルジュー72の巻芯は何度か作った事があります。特長なのは太い・細いの差が大きい事。しょーもないですか。確かに。でも太さが無いとガタつく事があるので結構慎重に作らないといけないですよ。・・・ってそんな人はいないか。リューズを引いた時に結構な力がかかって削れてしまうのは良く見ますよ。
時刻機構から
香箱が劣化してきていますが、まずはこのままで組んでみます。香箱の内部や芯が摩耗してきていなければそのまま使います。部品流通少ないんです。
組んでいくと問題発見
写真はガンギ車と4番車です。4番車の軸を受けているルビーが割れていましたので交換します。交換しますって簡単に書いていますが、純正があるわけないので合う石を探すのが大変です。
割愛しまくって完成
とりあえず組み上げますが、クロノグラフを作動させると止まります・・・ガイィィーン。すぐ止まるなら歯車どうしの喰い合いが悪いとかありますが、ある箇所で止まる。
おかしいなと思って観察しているとクロノグラフランナーの歯の一部が変形していました。うーん、出来れば歯車交換が一番ですが、とりあえずは調整して様子を見ていきます。
トリカレ側
こちらの個体もランニングテストをして様子を見ていきます。こういったように様子を見ながら調整してきますので、古いモデルは時間がかかります。本来なら劣化している部品は・・・。本来ははないんだよな、2018年では。とにもかくにもご利用ありがとうございます!
もちろんバルジューばっかり修理しているわけではありませんよ。色々な修理をしております。ご依頼はお気軽にメールからどうぞよろしくお願いいたします!いつも修理が詰まっていますが、出来るだけ対応しております。出来るだけ。
こないだ弟の誕生日でご飯を食べに行ったんですが、漁師兼農家兼サーファーの弟との話で「最近忙しい?」と聞くと「おう、明日は井戸を掘らんとかんでな」・・・え、何?ジャイカにでも入ったんか?「昔は自分で井戸を掘ったんだぜ、だから井戸掘る」・・・分かるような分からんような。
畑に掘るらしいですが、今の日本で自前の井戸を掘る人っているのか。まあこういう向こう見ずな元気を見習いたいとは思わない野の方でした。
アディオース!(井戸の絵文字らしいです)