修理ブログ
Cartier カルティエ タンク 手巻のオーバーホール
カルティエ タンク 手巻 Cal.ETA2512-1
症状:精度不良(測定不能)
修理内容:オーバーホール・ケース洗浄
修理金額:オーバーホール・22,000円
分解して洗浄しました。ムーブメントはETA2512−1になります。少し前のカルティエにはよく使われている機械です。レディースの手巻です。
精度が全く出ていない事と、テンワの動きを見るとヒゲゼンマイの不具合の有無が分かります。写真ではひどく変形しているように見えますが、実際は変形よりも絡んでいる状態です。
修正しました。絡んでいる部分が変形しないように外しながら修正します。ひどい変形の場合は修正では精度が出ませんので、交換が必要になることがあります。古いモデルでは交換出来ませんので、精度範囲を広めに見て頂いています。
組み立てました。
カルティエはクオーツ式の場合は部品が入手できないか、出来ても高額になりますので、見積りが必要な場合があります。またカルティエの銀無垢に金張りのケースは酸化して色がくすみますが、消しゴムなどで擦って頂くと綺麗になります。
今後も修理のご紹介をいたします。
IWC Cal.423 オールドインターのオーバーホール
IWC・トノー オールドインター:Cal.423
症状:不動(ゼンマイ切れ)
修理内容:オーバーホール・ケース洗浄・ゼンマイ交換
修理金額:オーバーホール・27,500円+部品代5,500円 合計33,000円
分解して洗浄しました。オールドインターの手巻だと89が有名ですが、こちらは423です。やや薄型になるかと思います。
オールドインターのゼンマイは特殊な形状で、ツノ付きというゼンマイを使用しています。オールドインターのゼンマイはまだ国内材料店で入手出来るものがありますが、一般のゼンマイよりも高いため別途部品代を頂戴しています。どうしても入手出来ない場合は代用のゼンマイを加工して使用します。今回は新品が手に入りましたので交換します。
組立中です。年式は60年代かと思いますが、綺麗な状態を保っています。
裏側も組み立てました。ガンギ車のショックバネが独特な形状をしています。
ダイアルと針を取り付けます。手巻式でカレンダーのないモデルは構造がシンプルで、故障しにくいと思います。18KWGのケースに収めてランニングさせます。
今後も色々な修理をご紹介いたします。
ROLEX DATE JUST CAL.2235 ロレックス・デイトジャスト・レディースのオーバーホール
ロレックス・デイトジャスト:Ref.79174 Cal.2235
症状:定期メンテナス
修理内容:オーバーホール・ゼンマイ・パッキン交換・ケース・ブレスレット洗浄
修理金額:27,500円
分解して洗浄しました。定期メンテナスのため不具合はありません。
ゼンマイを交換して組み立てます。レディースのムーブメントは小さいため作業は細かくなりますが、ロレックスのCal.2235はしっかりとして組立やすい構造です。2235よりも前のキャリバーには難ありというモデルもあります。またご紹介できればと思います。
ダイアル側も組み立てます。左に見える巻き貝のようなパーツでカレンダーを飛ばします。ちなみにデイトジャストは瞬時に日付を飛ばす機構のことで、12時ジャストに変わるという意味ではありません。
ダイアルと針を取り付けます。定期的にメンテナンスされている個体のようで良い状態です。
自動巻ユニットも組み立てました。レディースはメンズに比べて精度はやや落ちますが、クロノメーター規格に入るように調整します。レディースのクロノメーター規格は−5秒〜+8秒になります。実際はもう少し精度は詰めるように調整しますが、年式や状態で精度の許容範囲は変わってきます。
今後も修理のご紹介をいたします。
ROLEX DATE JUST CAL.1560 ロレックス・デイトジャストのオーバーホール
ロレックス・デイトジャスト:Ref.1603 Cal.1560
症状:精度不良(測定不能)・ヒゲゼンマイ変形
修理内容:オーバーホール・ゼンマイ・パッキン交換・ケース・ブレスレット洗浄
修理金額:27,500円
分解して洗浄しました。60年代の製造で、かなり使用感があります。ヒゲゼンマイが大きく変形していて精度は全く出ていません。
2番車(長針の付く歯車)の受け穴が変形して広がっています。穴を締めるタガネで叩いて調整しますが、すでに以前の修理で詰めた跡がありました。15系はこの2番車の受け穴が広がる事が多いです。このあたりに精度などの個体差が出てきます。
変形していたヒゲゼンマイを修正します。精度に直接影響のある部分ですので、注意が必要です。あまりひどく変形していると修理不能になることがあります。
ヒゲゼンマイを触りましたので、ビートエラーが変わります。ビートエラーを修正するためのヒゲ持ちの可動域を超えてエラーがありましたので、ヒゲ玉を直接動かして調整します。
時刻機構まで組み立てました。ヒゲゼンマイを修正すると精度が変わりますので色々と調整が必要です。この時点で調整しても精度が変化する事がありますので、ランニングしながらの調整が必要です。
このムーブメントは構造の関係で自動巻ユニットよりも先にダイアル、針を取り付けます。
自動巻ユニットを組みました。テンプ受けのネジが傷んでいますので、ネジを磨きます。写真は磨く前になります。
ヒゲゼンマイを修正することは多くありますが、微妙な作業のためランニングテストさせながら調整します。そのため通常より時間がかかることがあります。
今後も色々な作業をご紹介いたします。
IWC Cal.852 オールドインターのオーバーホール
IWC・ラウンド オールドインター:Cal.852
症状:精度不良・自動巻巻上不良
修理内容:オーバーホール・ケース洗浄・自動巻パーツ交換
修理金額:オーバーホール・27,500円+部品代16,500円 合計44,000円
分解・洗浄を行い組み立てます。オールドインターはCal.8541系が一番多いと思いますが、この852、853もご依頼頂く事があります。どのムーブメントも構造は同じように見えますが、部品によっては互換性がない部分があります。
自動巻ユニットを組み立てます。お問い合わせ頂く不具合でたまにある症状は、自動巻ローターを支えるローター芯の劣化です。摩耗して自動巻ローターが上手く回らない、ローター芯が折れて巻上が出来ない等です。以前はローター芯を作成していたこともありましたが、現在は海外から取寄して交換しています。キャリバーによって高さ等違いがありますので、その都度お見積しています。おおよそ15000円〜20000円程度が目安になります。
こちらの個体はローター芯は使用出来ましたが、巻き上げる爪部分が摩耗して3分の2ほど無くなっていました。この爪部分には粘度の高い時計油を注油しますが、経年で油が劣化しても使用しているとこのように摩耗が進行します。
爪部分は摩耗していても使用できないことはありませんが、交換希望となりましたので、海外から取寄して交換しました。オールドインターのパーツはほぼ国内では入手が困難ですので、海外輸入になります。今回は部品代が16,500円になりました。
IWCやオメガなどのオールドキャリバーのパーツは近年値上がりが続いています。海外輸入は時価になりますので、見積りが必要になります。
修理には海外からの部品の取寄がありますので、通常4週間よりも1〜2週間長くかかります。
今後も修理内容をご紹介いたします。